―瑠衣の隣にいるのは、私がいい。もっと温もりを感じたいと思うのは、罪でしょうか？ 遠距離恋愛になって数年の歳月が経った。 会えるのは年末年始だけで、普段はメッセージや電話のやり取りのみである。 一年中、世界を飛びまわる恋人・瑠衣は、業界では名の知れた人で、誰かに相談することもできない。 この関係に向き合わなくてはいけないのに、向き合わなくていい理由を探してしまう。 対峙して壊れてしまうくらいなら、いっそこのままでいい。 「まだ大丈夫」 鼓舞しながら、過ごす日々にも疲れてきた。 まだ始まったばかりだというのに、今年は一年の長さに耐えられるだろうか。 私ばかり瑠衣を好きで、どうしたらいいの？ 現実に苦悩しながらも遠距離恋愛で確かな愛を育む社会人百合小説。 ―どこかに瑠衣の足跡を感じられたら、ひとりじゃないと寂しさを埋められる。 それなのにどうしてどこにも見つからないの― ------------------------- この時間がいつまでも続けばいいのに一年に数日しか叶わない。 彼女だって分かっているはずだ。いつまでも同じではいられないことを。 だからこそ、この瞬間が掛け替えのないものになっている。 いつかは乗り越えなければいけないことをお互いに先延ばしにしている。 それは、彼女には彼女らしくいて欲しい、私には私らしくいて欲しい、お互いのエゴが含まれているからである。