大陸からさらに北東。凍える海を抜けた先にその国はある。 〝サラマンダー王国〟人間からすると亜人種の島国だ。 見た目はヒトと変わらない。 ただ彼女たちは女性しか存在しない種族である。 女性同士で番い女性同士で子供を作るのだ。 当然、国を動かし生活を営んでいるのも女性だけ、男性はこの国に定住できないと法律で定まっている。 地理的にこの国は一年を通して寒かった。 けれども、もうすぐに短い夏がやってくる。 祝福祭が近い季節、一人の文官にある命令が下った。 「私が殿下の側近!?」 「そうそう。ちょっと変わった姫様だけれども、よろしくね」 「『よろしくね』って……私は殿下と何の面識もありませんよ?」 「あの方の考えていることなんてわたしにだって分からないわ。でも、貴女を側近に指名した。それだけ」 今年に大学校を卒業して文官になったばかりのロゼッタ=ローザは急な異動に戸惑っていた。 この国の第一王女の側近に何故か大抜擢されたのだ。 つまりそれは未来の女王に直々に仕えることを意味する。
(もっと見る)大陸からさらに北東。凍える海を抜けた先にその国はある。 〝サラマンダー王国〟人間からすると亜人種の島国だ。 見た目はヒトと変わらない。 ただ彼女たちは女性しか存在しない種族である。 女性同士で番い女性同士で子供を作るのだ。 当然、国を動かし生活を営んでいるのも女性だけ、男性はこの国に定住できないと法律で定まっている。 地理的にこの国は一年を通して寒かった。 けれども、もうすぐに短い夏がやってくる。 祝福祭が近い季節、一人の文官にある命令が下った。 「私が殿下の側近!?」 「そうそう。ちょっと変わった姫様だけれども、よろしくね」 「『よろしくね』って……私は殿下と何の面識もありませんよ?」 「あの方の考えていることなんてわたしにだって分からないわ。でも、貴女を側近に指名した。それだけ」 今年に大学校を卒業して文官になったばかりのロゼッタ=ローザは急な異動に戸惑っていた。 この国の第一王女の側近に何故か大抜擢されたのだ。 つまりそれは未来の女王に直々に仕えることを意味する。